後日、機会はやってきた


配達から戻ってきたら
あの子とばったり出くわした

おばあさんに頼まれでもしたのか
花の手入れをしていた

あの子は私の存在に気づくとぴたりと固まって

しばらくこっちを凝視


かと思えば


はっと立ち上がって、わたわたと逃げようとする


またいなくなってしまう前にと
慌てて声を張り上げる



「あ、あの!花、ありがとう!」

「っ」


声が届いたみたいで
ドアの向こうに消えかけていた後ろ姿が寸前でぴたりと止まった



……



「……こ、こちらこそ、ありがとう……」



ドアに身を隠しながらも
少しだけ顔を見せてくれたあの子は、ぎこちなくはあるけど言葉も返してくれた

そのことにほっとしつつ


……次にかける言葉に悩んだ



「「……」」



微妙な距離でお互い沈黙



……えっと、

な、何か話題……


……………………う、浮かばない……



お礼を言いたいがために引き留めてしまったけど
それ以外の言葉なんて何も考えてなかった