「……当たり前、なんて思いたくない
私は………相手を傷つけたくない」


……榊の言ってることは間違ってない


そんな理想論を返す私の方がおかしい



でも



それでも



誰も傷つけない世界を望んでる



そんな自分を……望んでる




「傷つけたから、傷ついたから学べることもある
感情や思考を豊かにすることが出来る
生きる上で必要なものを育める」



「人はそういう風にできている」



「それでも、もし傷つけた事に後悔して
罪悪感を消せなくて苦しいなら
対処法は簡単だ」


「佐奈。お前は知ってるだろ?」


「……?」


「分からないか?
お前がさっき俺にしたことだぞ」



私が……榊にしたこと……




『…………ごめんなさい』




「………………『謝る』?」



ぽつりと答えると榊は笑って頷いた



「そうだ
傷つけたと、酷いことをしたと思うなら謝ればいい」