やっとのことでたどり着いた山頂


息を切らしながら

きょろきょろと周囲を見渡す


……
…………いない


いつもならいるのに



探していた相手の姿はなくて
一昨日のまま放置された木材と工具だけがそこにあった


「……」


呆然とその場に立ち尽くす



かなかなかなかな……



夕方の赤い空、ひぐらしの鳴き声


……なんだか、すごく悲しくて



どうして?


どうして私は、あの人がいない事に
こんなに動揺してるんだろう


ぎゅっと服の上から胸を押さえて、俯く



……榊と、時間を共にしたのはたったの2日

それも会話なんてほとんどしてない


名前も職業も年齢も

何もかも謎に包まれたあの人


どう考えても不審者なのに




どうして




「…………………………榊」



こんなにも



会いたいと思ってしまうんだろう





「何だ?」