……だめだ

やっぱり考えれば考えるほど分からない


あのひとは本当によく分からない



……。

…………分からない、はずなのに


どうしてあの時私は


あのひとのあの表情に


懐かしさと苦しさを感じたのか



…………今日も、榊はあの場所にひとりでいるのかな



「っ」



…………どうして


そう思うと


こんなに、泣きそうな気持ちになるの?




ートントン



「……佐奈」



扉越しの弱々しい声に意識を引き戻される


……お母さん



「……」


相も変わらず声を返せずにいると
いつものようにお母さんが言葉を続けた



「佐奈、お母さんしばらくおばあちゃんの家に泊まるから」