驚いたような感動したような
なんとも言えない顔で私を見下ろす



「……初めて、俺の名前を呼んだな」





……

…………そっち?


てっきり声をあげたことに驚いたんだと思ったのに

あまりに榊が間の抜けたコメントを寄越すものだから、私の方が呆気に取られてしまう


「………結構、嬉しいものなんだな」


呟くと、柔らかく表情を崩す

言葉通り嬉しそうな表情に私は毒気を抜かれた


「…………大袈裟じゃないですか?
名前、呼ばれたくらいで」


伸ばしていた手をゆっくり下ろす

工具を取り戻すのを断念し
(もうそんな気力がなくなってしまった)
深くため息をつく



「名前を呼ばれたのは十数年ぶりだからな」