「…そんなに臭うか?」


作業を再開すると
隣の榊が少し落ち込んだ様子で
自分の体や服のにおいを嗅ぎ始めた

どうやら
自分は嫌な臭いを発していると勘違いしてるみたい


「逆ですよ」


「不思議な…
いい匂いだと思ったんです
どこか懐かしいような…」


ぽつりと呟くと榊がぴくりと反応した


「自分では分からんが、お前は好きか?
この匂い」

「…そうですね。……好きかな」


甘い花のような不思議な香りは
疲れきった心にほんの少しだけ安らぎをくれる

ラベンダーの花の香りには
鎮静効果があるというのと同じようなものだと思う


でも私はラベンダーの花の香りより
こっちの方が何倍もいいと思う