「…」


………榊の姿が段々、薄れていくのが分かって



……。



……そっか、もう……




「おじいちゃんね
会いたがってたんだよ。
最後までずっと。榊の事、心配してた」



最後に、これだけは伝えないと


おじいちゃんがどれだけ榊を大事に想っていたかを



「…ああ。知ってる」



始めて榊は痛そうな顔を見せた

笑っているけど、今にも泣き出しそうな



「…後悔した
あいつが亡くなってから」



その日を思い出すように
小さく呟きながら榊は社に向かうと



「最後くらいは顔を見せて
見送ってやれば良かったと」



あの花瓶に手を伸ばす



「……そうしたかったんだと、後から気付いた」



……あれは
おじいちゃんが榊にあげた手作りの花瓶

榊の瞳とよく似た色のものができたと
喜んで贈ったもの


…そう、ふたりに聞いた



……荒れ果てていたこの場所で
それだけが綺麗だったのは


きっと榊が


ずっと大事にしていたから



自分の社よりも