「神は、人から求められることで生まれ落ち
その存在を保つ」


「乞われ、願われ、そこに在(あ)る
願うもの、信じるものがいなくなれば
その存在は消えてなくなる」


「不思議だったんだ
一正が亡くなったのに何で俺は存在を保っていられるのかと」


「理由は単純だった
お前がいたからだ」



社に向けていた視線がまた私に戻る



「……私、おじいちゃんが亡くなってから
ここに来てない
榊の事だって…」



ずっと忘れてた



「さっきも言ったろ
心の奥でお前は俺を覚えていてくれたと」



「どれだけ嬉しかったと思う?
もう一度、お前に会えた時」


「お前が俺の名前を呼んだ時」



「お前が俺の存在を望んだから
俺は今もここにいられるんだ」



伸びてきた手が頬に触れて

慈しむように撫でながら、榊は優しく笑う



「……これからも?」


「ああ。お前が忘れない限りな」


「…忘れないよ、もう」