(どうか、来世では強い人間になれますように)





…ここに祀られてる神様の名前はなんだったかな


この山の神様が祀られてるのは知ってる

おやま様、山神様、大神様
呼び名はたくさんある


だけど、それじゃない名前が…



「…?…それじゃない名前ってなんだろう…」



たくさんの呼び名

でも全部知ってはいる

だけどどれもぴんとこないのはどうして?


もやもやした気分になるのはなんで?





…そういえば、ここに遊びにくると
いつも誰かがここにいて
一緒に遊んだ覚えがある


遊んだというか遊んでもらっていた


…お兄さん、だった気がするけど
あの人の顔も名前も今となっては思い出せない


嫌な記憶は鮮明に残って
楽しかった記憶は朧気なんて…



「おー、やってるな」



明るい声に、はっと我に返る

買い物袋を揺らしながら
こちらにやって来るのは例の不審者


「…」


軽く頭を下げてから作業を開始する


とん、とん、とん


「危なっかしい手付きだな
そんなんじゃ、今に怪我するぞ」

「大丈夫で…い、っ!」


言われた矢先に
振り上げた金槌が釘ではなく
その横の私の人差し指にヒットする


「~~~っ」


金槌を握ったまま固まる

一秒経つごとに、じわじわと痛みが増していく


「ほらみろ」


呆れたようなため息を漏らすと
私の前に腰をおろした