名前は名乗ったけど名字は教えてないから
表札を見て家が分かった、ってわけでもないだろうし


…単純に、犯罪に結びつける事もできるけど


このひとがそんなひとじゃないのは分かってる


お金や身体が目的なわけじゃない
誰かの生活を覗き見して楽しんだり、壊したりして愉悦に浸るようなひとじゃない


相手の命や心を脅(おびや)かすようなひとじゃない


事実、私はこのひとに壊されたり盗られたものなんてひとつもない


何の被害も受けてない



だからこそ

純粋な疑問ばかり胸の中で膨らんでいく



「…」



聞こうと思えばいつでも聞ける
今、問いただしてはっきりさせることだってできる



だけど



「……いつか、分かりますよね」

「ん?」

「なんでもないです」



予感



なんとなく


そう遠くない日に、その答えが分かる気がする



だからまだ



このままで




朱と青

混ざって溶け合う空と海


ゆっくりと色を変えていくそれを目に焼き付けながら、今日も一日を終えた