「あれ、日比くん? なにやってるの、こんなところで?」
眞田亜紀乃。
委員長だった。
「……すごいものができたなぁと、感動してたんだ」
「そっか、日比くんの発案だもんね? それは、感動もひとしおだね」
青い世界の中で、眞田が微笑んだ。
「考えたの、実は俺じゃないんだ」
「え、そうなの?」
海草が揺れる海の底。
口から溢れる空気の泡みたいに、言葉が漏れ出た。
「俺さ。 最近、ある人と交換日記しててさ」
「そ、そうなんだ」
「最初は、交換日記なんてめんどくさいし、やりたくなかったんだけど、」
「うん…」
「徐々に、そいつとのやりとりが面白くなってて、気付いたら書くのが楽しくなってた」
「そうなんだ?」
視界の端で、魚が群れをなして掃除ロッカーに吸い込まれていく。
イソギンチャクが、のんびりと揺蕩っている。
ここは海の底。
何を言っても、大丈夫。