文化祭の夜。
教室にひとり。
体育館やグラウンドの喧騒が、遠く薄く聞こえる。
延々と作動させている機器が、教室中を海の世界に塗り変えている。
青い暗闇の中で、
水瀬からの手紙を読み返す。
「ニブいのも、いいかげんにしろ、か。 ホントだよな」
誰にでもなく呟く。
そして、思う。
大丈夫だ、水瀬。
これからも水瀬を忘れることはないだろう。
きっと、水瀬が考えているよりも、もっと多く思い出す。
それと、ありがとう。
お前からの手紙がなかったら気付けなかった。
気付くタイミングはたくさんあったのに。
「水瀬。 お前はサイコーな奴だよ。 保証する」
見上げる。
ちょうどジンベエザメが頭上を悠然と泳いでいく。
数ヵ月の集大成。
青春の1ページ。
是非、お前に見てほしかった。
目を閉じると、
誰が用意したのか海の中にいるような、音まで聞こえる。
人間って、やればできる。
初めて、知った。
やれば、できる。
教室の外に気配を感じる。