そのとたん、名残惜しいと思った。

彼の手が離れたことを、私は名残惜しく感じてしまった。

何でそう思ったのか、自分でもよくわからない。

「結香?」

「は、はい」

宇奈月さんに名前を呼ばれて、我に返った。

心臓がドキドキと、早鐘を打っている。

ずるい、本当にずる過ぎる…。

宇奈月さんのくせに、ずる過ぎる…。

「帰ろうか?」

そう声をかけてきた宇奈月さんに、
「そ、そうですね…」

私は返事をした。

心臓の音が彼に聞こえていないだろうか?

もし聞こえていたら…私、恥ずかしさで死ねる自信がある…なんて、そんな自信を持っていても仕方がないんだけど。

宇奈月さんが歩き出したので、私も一緒に歩き出した。