「いえ、そう言うことを言っている訳じゃないんです…」

そう言った私に、宇奈月さんは訳がわからないと言うように首を傾げた。

「ただの同居人、それも1ヶ月だけ一緒に住んでいる相手に、そこまでしてもらう必要はないと言いますか…。

あのお金でしたら、私が直木くんに言って払わせますので…」

「その必要はない、僕がいいと言っているんだから」

「ですけど…」

「女に金を払わせるなんて、そんなものは男がすることじゃないだろう?」

宇奈月さんは私に向って手を伸ばしたけれど、すぐにその手を引っ込めた。

「えっ、何ですか?」

その動作がよくわからなくて聞き返したら、
「ごめん…。

今、君の頭をなでたいと思った」

宇奈月さんはそう言うと、目をそらした。