それから数時間後、私はすっかり酔いつぶれた直木くんをおんぶしていた。

「――んーっ…」

「もう、だから飲み過ぎるなって言ったじゃない!」

叱っている私の声は完全に聞こえていない。

駅に到着したらタクシーを拾って直木くんを家まで送り届けないと。

「結香?」

聞き覚えのある声が聞こえたので視線を向けると、
「宇奈月さん…」

宇奈月さんがいた。

「何してるんだ?」

私のところへ歩み寄った宇奈月さんが声をかけてきた。

「えっと、後輩が酔いつぶれちゃったのでおんぶして…」

「おんぶしてどうするつもりだ?」

「駅まで行ってタクシーを拾おうかと…」

「ああ、なるほど」

宇奈月さんは直木くんに手を伸ばすと、彼の頬をツンツンと指でつついた。