「うん。あの、わたし、何かおかしなこと、書いてた?」

「え? ……あ、違う違う!」

 わたしの不安そうな声に気が付いて、晃太くんは急に表情を緩めると、いつもの優しい顔に戻った。

「ハルちゃん、今までもらった課題って取ってある?」

「うん」

「見せてもらってもいい?」

「うん。待っててね」

 本棚に手を伸ばして、これまでもらったプリントを閉じたバインダーを渡すと、晃太くんはまた真面目な顔でめくり始めた。そっちは、過去のものだから、先生からのコメントや評価も書かれている。

 少し待ったけど、晃太くんはプリントから目を離さなかった。一つを見終わると、次の物もまた真面目な顔で読んでいる。

「晃太くん、お茶、入れてくるね?」

「……あ、ごめん。おかまいなく」

 晃太くんは一瞬だけ、わたしの方を見て、すぐにまたプリントに視線を落とした。

 沙代さんがいなかったので、ティーバッグで紅茶を入れる。ミルクとレモンを用意して、紅茶の入ったマグカップと一緒にお盆に乗せて部屋に戻ると、晃太くんはようやくプリントから顔を上げた。

「ありがとう。ごめんね、気を使わせて」

「ううん。えっと、わたしが入れたティーバッグの紅茶だから、そんなに美味しくないかも。よかったら、ミルクかレモンを入れて飲んでね?」

 晃太くんの前に紅茶を置きながらそう言うと、晃太くんはくすくす笑う。

「ありがとう。ハルちゃんはミルクティなんだ。じゃ、俺もそうしようかな?」

 そう言って、晃太くんはミルクポットに手を伸ばした。