翌日の夕方、ピアノの練習をしようとしたら、カナに「絶対に無理しないこと。長くても一日に三十分まで」と約束をさせられた。

 だけど、約束するまでもなく、体力的に三十分は厳しくて、ピアノに触れられるのはせいぜい十分か十五分。それでも、きっと毎日の積み重ねが大切だと思って、少しでも弾くようにした。

 わたしがピアノを弾いているのを見て、パパがとても驚いていた。だから、晃太くんにピアノを教えてもらう事になったと話したら、パパは、買ってもらってから十数年、やっと日の目を見たピアノに目をやり、

「弾けるようになるといいな。無理せず楽しむんだよ」

 と、わたしの頭をなでてくれた。



 木曜日と金曜日は、学校に行って講義を受けて、帰ったら、ほんの少しだけピアノの練習をして、夜は大学で出た課題を片付けて。

 土曜日には病院に行って、「疲れが出てるから、無理しないように」と言われて、カナに無理やりお昼寝をさせられて。寝る前に少しだけピアノを弾いて。

 日曜日は半日だけ寝て過ごして、それから、少しだけピアノを弾いて、溜まった課題を片付けて。

 また同じように、講義を受けてピアノの練習をして課題を片付ける月曜日と火曜日を過ごしたら、あっと言う間に一週間が過ぎていて、晃太くんのピアノレッスンの日が来た。