「ごちそうさま! 沙代さん、美味しかった~!」

 気が付くと、カナは夕飯を食べ終わって、お皿を重ね始めていた。

「お粗末さまでした」

 キッチンで片付け物をしていた沙代さんが顔を出した。

「遅い時間にごめんね」

「いえいえ、お気になさらず。奥さまも旦那さまも遅い日は遅いですからね」

 カナと沙代さんの会話を聞きながら、思わずあくびをすると、カナが目ざとく気が付いて心配そうな顔をする。

「ハル、疲れただろ? もう今日は寝る?」

「……ううん。お勉強、しなきゃ」

 そう。一つ片づけておきたいレポートがあるんだ。まだ夜8時半。一時間くらいは起きていても良いかな?

 だけど、もう一度、あくびをするとカナに問答無用で抱き上げられた。

「今日はもう寝よう? 明日も学校行きたいだろ?」

「行きたいけど。……大丈夫だよ?」

 ……ああ、でも、……カナ、あったかい。

 運動した後だからか、ご飯を食べたところだからか、カナの体温はいつもより高いみたいで、そのぬくもりに触れていると、何だか妙に眠くなる。

 思わず目を閉じると、

「歯磨き、もうしただろ? このまま寝てもいいよ?」

 カナは笑いながらそう言って、そのままわたしを寝室へ運んだ。

 ベッドに降ろされ、布団をかけられたと思ったら、額にキスが降って来た。

「おやすみ、ハル」

 まだ、おやすみしたくなくて、返事をせずにいると、わたしの考えている事に気が付いたのか、カナがクスッと笑った。

 だけど、もう目がとろんとして、もう一度起きて何かするのは無理そうだった。
 仕方なく、

「……おやすみなさい」

 と口にすると、カナは満面の笑みを浮かべて、もう一度、

「おやすみ」

 と、今度は頬にキスが降ってきた。