晃太くんの言葉の中にカナの意志を感じて、思わず苦笑する。
 わたしの苦笑の意味を感じ取ってか、晃太くんも苦笑い。

「まあ、これくらいの曲を楽しんで弾く分には、そう体力使うわけでもないから、ホント、ハルちゃんの好きにして良いと思うよ?」

「うん」

 そして、晃太くんはクスクス笑いながら言った。

「どうせ、ハルちゃんが無理しようとしたって、叶太が許さないだろうし?」

 ……だよね。カナ、心配性だし。

 晃太くんは笑顔のままに食堂の方に視線を向けた。

「沙代さんのご飯、久しぶり。今日はなんだろうね?」

「えっとね、今日は和食だって言ってたよ」

「いいね! 沙代さんの料理、本当に美味しいよね」

 楽しげにそう言うと、晃太くんはわたしを促し、足取り軽く食堂に向かった。

 お兄ちゃんがいた頃は、晃太くんもよく遊びに来ていて、ご飯もよく食べていった。

 今日はカナ、最後まで空手をやって来る。パパもママもまだ帰っていない。だから、ご飯は晃太くんと二人で食べる予定。

 カナもお兄ちゃんもいないところで、晃太くんと2人で夕食を食べるというのが、何だかとても不思議だった。不思議なのに、何故か妙に懐かしかった。