息を切らしながら私の前まで来たアツのオデコには、うっすら汗が滲んでいる。
怒鳴られると思っていたのに、座ったままの私の頭を引き寄せて、優しく撫でてくれた。
「・・・ごめん。」
私より先に謝ったアツ。
ドクドクと聞こえるアツの心臓の音を聞きながら、込み上げてくる涙をグッと飲み込んだ。
「ごめんなさい。」
はぁ〜っと大きなため息を吐いて、私の隣に座ったアツが今度はケラケラと笑い出した。
何で笑っているのか理解出来ない私がアツの顔を覗き込むと同時に腰に回された手。
「俺マジでバカ?携帯ないって分かってから、公衆電話の存在に気付くまで1時間もかかったし。」
確かに私も公衆電話の表示を見てハッとした。
携帯に慣れすぎてて、街の中にある電柱とか、ゴミ箱みたいに、景色の1つの様に見落としていた。
本来の使い道を忘れてた。
「お前バカなんだから、うろちょろしてんじゃねーよ。勝手にいなくなんな。」
ひどい言葉の割りに優しい口調。
たくさんの人が行き交う駅にもかかわらず、腰に回した手に力を入れて私を引き寄せると、アツは私の唇にそっとキスをした。
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