繭に連れられてやって来たのは、裏庭。裏庭は昼間でも薄暗く、生徒が立ち入ることは滅多にない。

「こんな人気のないところに来て何するの?」

瑠衣が訊ねると、繭はゆっくりと振り返る。上目遣いで瑠衣を見つめ、その白い頬は赤く染まっている。

「望月先輩、好きです。私を先輩の彼女にしてください」

「はあ!?」

瑠衣は驚き、口をパクパクさせる。どこの漫画だ、と瑠衣は思った。

ハリー・ポッターの世界にあるような惚れ薬など現実には存在しない。それなのに、今目の前で、一度も話したことがないかわいい女子から瑠衣は告白されている。大抵の男子なら即okをするだろう。

しかしーーー。

「ごめん。俺、君のことよく知らないし…」

やはりどんなにかわいい子でも、よく知らない子と付き合うわけにはいかない。瑠衣はすぐに断った。

「そんな!私、ずっと前に先輩のことを見かけて好きになったんです!これから知っていけばいいですよ!」