次の日から漣は、朝学校にきてから、休み時間や移動の授業の時さえ龍の近くにいた。

1人っ子の漣は、歳の近い、アニメや遊びの話をできる相手が今までいなかったが、今は違う。

龍がいてくれる。
龍がいるから自分は輝けるし、人に興味をもつことを素晴らしいと感じられる。
漣には色んな感情が備わっていった。


友利のことを好きと感じられるのも、龍との名残なのかもしれない。
ただ、口にすることはできないが…。





いつのまにか漣と仲良くするようになった龍に、クラスのいじめっ子が目をつけた。

自分の手下であった漣をとられたと思ったのだ。
別に漣に特別思い入れがあったわけではない。
ただ自分から何かを奪われたというプライドの為に…。









その翌日から龍はいじめっ子から教科書に落書きされたり、掃除を1人でやらされたりいじめを受けた。


それでも龍は表情1つ変えない。
それに苛立ったのだろう。
いじめっ子は龍の靴を隠した。
漣も一緒になって探した。
靴箱の周りにはない。


玄関の掃除をしていた生徒に尋ねた。
貴重な発言を逃さぬようにと手帳にメモを取りながら。



だが、誰に聞いても知らないの答え。
まして

「関係ない。早く帰りたいから邪魔しないで」

と言い出す者までいる。



もうすぐ夕暮れが近付いていた。


龍が口を開く。

「もういいよ。どうせみんな他人はどうでもいいんだ。わかってたことだけど。探してくれてありがとう。僕、先帰るね」


龍はそのまま上履きで帰ってしまった。


それでも漣は探し続けた。
保健室や職員室、ゴミ捨て場まで汗だくになりながら、手帳に小学生らしい汚く簡単に描いた学校の地図に印をいれながら。





そして8時頃、ようやく発見した。
2年生のトイレで。

それを龍の靴箱にいれ、疲れきっていた漣は、日が沈んだ暗闇の中帰宅した。
帰ると両親が心配したと怒って泣いてくれた。
理由を話すと、よくやったと言ってくれた。
嬉しかった。

その時漣は、歓喜と達成感で小学生になって初めて泣いた。


きっと龍も明日喜んでくれるだろう。


しかし……