樹はキスが上手い。


…って、

経験豊富じゃないあたしが何を言うんだって感じだけど…



やっぱり樹のキスはどんなに回数を重ねても、
毎回のようについていけない呼吸と言い表すことのできない感覚に溺れてしまう。


息が続かなくて苦しくて、

程よい筋肉がついた樹の胸板をとんとんと叩く。



けど…

樹は全く動じずに絡める舌も、後頭部に置かれた手を力を弱めるどころか、


さらに勢いも激しさも…力も増している気がした。



「い…っん……ふぁ…」


いい加減、あたしが辛いことを知ってか知らずか分からないけど…


唇と唇は離れて二人の間に銀色で細い糸が伸びる。

しかしそれはプツンと切れると、それと共に樹の余裕な笑みがあたしの視界に入る。



「顔、真っ赤」


クスクスと笑いながらあたしの唇を優しく親指で拭うと、その手は素早くあたしの身体のラインをなぞる。


「……っ」

そんな些細な仕草にでさえも敏感に反応してしまうから…本当に困ってるの、本当に本当に。



「ねぇ、愛梨」


素早くその手は服の中に侵入すると、
触れるか…触れないかギリギリの触れ方で、もっともっとあたしを困らせる。



「な、なに…っ?」