「女の子がそんなこと…言っちゃ駄目でしょう?」
あたしの口元を拭ってからそれをペロリと舐めて、
横目で不適な笑みを向けそう言った。
『“ナニ”が欲しいの?』
なんて、
意地悪なことを言っておいて。
しまいにはこんなことを言われ思わず赤面する。
…まるであたしが、
一人で恥ずかしいことをしてるみたいで嫌になる。
その癖、樹を求めてる自分が、もっともっと嫌に感じて仕方がないみたい。
「……意地悪っ」
ポツリと零れた言葉。
「今更」
余裕で悪戯な表情をすると、再び樹があたしの唇を塞ぐ。
それと同時に、
樹によって疼きだすあたしの身体。
首に感じる吐息。
「愛梨が欲しいモノを…あげる」
耳元で甘く囁かれたこの言葉を合図に、あたし達の影は重なりあった。