左手の親指があたしの唇をなぞる。
ツーッと線を引くようにその指が触れただけで、
もう頭がどうにかなってしまいそう。
そんな気がした。
「“ナニ”が欲しいの?」
言葉にされればされる程、
自分は何て女なんだ!…みたいに思っちゃう。
いっつもいっつもこうやって樹の手の平で踊らされているんだ。
それを樹は上から見下ろして笑ってる。
クスクス、笑ってる。
けど例えそれが恥ずかしくっても、情けなくても。
もう目の前の感覚に痺れたあたしは、誰か別の自分みたいに口を開いて…
「いつ…き、の…っ──」
けど瞬間的に唇にかかる甘く熱い吐息。
するとその吐息を合図としてか前触れとしてか、樹によって塞がれる唇。
今度は掠めるのでは無く、
奪い噛み付くように強引な口付け。
「…っん…ふ…」
息継ぎの間も与えてくれないこの強引さは、樹らしい。