まるであたしの心の中を見透かしたのかまた不機嫌そうな樹。
「何も…考えてないよ?」
「何も考えないで生活してる人間なんていないだろ…
つくならもっとマシな嘘にしなよ」
ゔ…っ?!
ちょっと心臓が痛くなったような気がして、
けどそんな大したことじゃないし、ていうかそこまでじゃないし…?
それにしても、
こうジーッと見つめられちゃうと…
どうも視線の行き場というか逃げ場というか、
そういうものが見つからないわけで…はい。
「何?…そんなに気になるわけ?」
猫のように大きな樹の目がグッとあたしを見据えるようにする、
最近少し明るさを増した樹の茶色い髪がサラリと風に触れて揺れるのが…
どうも美しく見える。
そんな樹の目を見てやっぱり首を横に振ることが出来なくて、
すると少し優しい笑みを浮かべ…
「信じられない…?俺のこと」
「…ううん」
とまるでその樹の言葉が魔法の言葉みたいに、
無意識のうち、あたしは首を横に振り。そう小さく呟いていた。
ズルいなぁ…
とか思いつつも、
相手が樹となれば話しは別かもしれないな、なんて。
「愛梨」
そう名前を呼ばれて、
少し下げ気味だった自分の視線を上に向ける。
…と、
重なる唇と唇。
っ?!
内心、驚きながらも…樹からのキスに応えているあたし。
「…っ…ん、……っ」
絡まる熱い舌が、どうもあたしの呼吸を乱して。