匂いって…抱き合ったりそういうことをしなきゃ移らないんじゃ?

そしたらもしかして、なんて嫌な予感。


もう心が顔に出ちゃってるあたしの眉は急速なスピードで八の時になって、唇をギュっと噛みしめた。


「…愛梨?」

そんなあたしの異変にすぐ気が付くと、不思議そうな声とそれに似た表情であたしを見る。


けどそんな樹と目があった瞬間。

あたしはいつもの悪い癖で視界が急にぼやけだしてしまうの。


でも…

嫌な予感ばっかりで、


今日のことがあるから尚更。


「何で泣くの?」

それでも樹の顔は不思議そうな顔からいつもの表情に戻って、ジッとあたしを見つめる。


視線の重さと熱さに耐えきれずやっぱり逸らしちゃう。


あたしのこと…もう好きじゃないの?

もう、嫌になっちゃったの?


すぐに泣くからかなぁ…ハッキリしない悪い癖が直らないから?それとも子供っぽいからなの?


ジュルッと鼻水を啜るあたしはやっぱり子供。

とてもじゃないけど…“大人っぽい”なんて言えやしない。



「言わなきゃ…分かんないよ?」

まるで子供相手に喋る様に樹は言う。