やっぱりたまにこういう時があって…

ガキみたいに、分かっててわざとこんなことを皮肉にも口にする。


何事にも冷めてる人間でも…

それなりに過剰反応しちゃうモノってあるし。



それなりに。


「何で…そんなこと、言うの?」

悲しそうでまるで子犬みたいな瞳。


「なんとなく」

その目から視線をフッと逸らすと、なんか…だんだん。


馬鹿らしい、なんて思えてきた。




本当はただ行って欲しくなかった癖に。

ただの自分の我が儘な嫉妬とか独占欲みたいな情けない感情の癖して。


「あい…っ「…行っちゃうよ、行っちゃうもんね!」」


……は。


“愛梨”と名前を呼ぶ前に、変な決心とも取れる声に邪魔をされる。



せっかく人が謝ってみてもいいかな…

とか思ってたのに。



ムカつく。


かなり。


「…どうぞ、俺は帰るからさようなら」

とキツく愛梨を睨み付けてから横を通りすぎる時に言った。


どうなっても一切の責任は俺には無いから。


無人に近い廊下を歩いて、きっと泣きそうな顔しながら俺の背中を見てそう、

そんな奴のことを考えて…無意識に溜め息。



……アホらし…。



「勝手にしろよ…」


ポツリと呟いて、心が狭くなった。