はぁ……。


「モテないよ…どうせあたしは、……モテないよぉだ…」

さっきまで怒って声を張り上げてたこととかがウソみたいに、急にシュンとして大人しくなってる。


いつもこんなパターン。


言いたい放題に言う割に、最終的にはやっぱり俺が苛めたみたいな展開。

別に苛めてないし。


「…で、何。」

「……モテないよ…知ってるよ……っ」

俺の言葉なんてまるで聞いてやしない。

また自分の世界みたいな暗い方向に進もうとしてる気がするんだけど…



それよりも、思うのは。


「モテたいの?」

壁に寄りかかったまま少し腰を屈めて愛梨の顔を覗き込む。


さっきから聞いてれば、……“モテる”とか“モテない”とかそんなのばっかりだし。


結論的に聞くなら『モテたいんだろ』って話し。



けどそこら辺は見逃せない訳で。


「…べ!……モ、…とかじゃ…いや…っ……その…」

と、顔を急に真っ赤にさせて顔の前で違う違うと手を何度も動かした。


言えてないし。


「図星」


“別にモテたいとかじゃ、いや、その”

的な感じの言葉が正しいのかもしれないけど……


「へぇ…」

背にぴったりと密着していた筈の壁は少しばかり離れて、行き場のない小動物の視線はユラユラと焦点を定めないまま浮遊してた。