人差し指をあたしの頬に沈めると、頬を突く。
「にゃ、に?」
口を押されて変な声。
「何で分かんないの?」
下からあたしを見上げるその表情を口調が、どうも心を擽る。
大人な表情をする樹だったり、ちょっと少年っぽい表情だったり、幼くて強請る様な瞳をする樹。
不思議な感じ…、
それよりも樹の言う意味が分かんなくって、首を傾げてみる。
「心込めて作ってね、市販とか受け付けないから」
ハァーッと重い溜め息をついてから、仕方ないと言わんばかりに言うと、あたしの髪に指を絡めて上目遣い。
樹はあたしの髪を弄るのが好きみたいで。
いっつもいっつもこんな雰囲気になるとこう。甘えん坊さんみたい…
クスクスっと笑うあたしを樹は不思議そうに見る。
それに樹の言葉が嬉しくって、欲しい一個はあたしのだけって。思っちゃってもいいのかなぁ…って自惚れそうだ。
「うんっ!頑張って作るね」
思わずクシャッと笑って言えば、それに応える様に優しく笑ってくれた。
すると樹は顔をしかめて口角を押さえた。
…あっ。
「樹、大丈夫…っ?」
そっと樹の顔を支える様にして触れる。
白井くんに殴られたその唇の傷が、見れば痛々しくて。
「……痛む?」
「うん、すっごく」
ワザと嫌味っぽく“すっごく”と樹は言うと、あたしを見る。
う、うぅ…っ
「ごめん、なさい…」
小さくあたしは言った。