パチパチッと何度も何度も瞬きをして、上に跨る樹の顔を見つめる。


「馬鹿にしてる?」

あたしの頬に手を添えて親指で撫でる。
僅かに掛かる髪を耳を掛けて、その頬を撫でていた親指はゆっくりと動いて唇を撫でる。


「…う、ううん」

首を左右に振って違うと言い張る。


「俺あのイベント嫌いだからさ、止めてよね…あんまり穿るの」

そう言ってから隣にドサッと倒れると『寝る』ってそれだけ。


あたしに背中を向ける様にして本当に寝ようとしてるみたいだった。


…何か、ちょっと変な期待?

し!!してないしてない!!!


ブンブンと首を大袈裟に振って否定を頭の中で何度も繰り返してみるけど…

やっぱり、寂しいなぁ…なんて。


「ねぇ……?」

声を掛けても返答無し。


ていうか、あたし去年の今頃は樹のことなんて全く気にして無くて、だからバレンタインに樹にチョコレート。なんて、

今思えば考えられないことだったなぁ…


本当、昔の樹への印象って。

ただの“自己中”で“我が儘”で“ドS”で…それでもってぜっんぜん優しくなんかないし!!


いつだってあたしを見下してて、馬鹿にしてそれでもって相手になんてしてなくって…去年のあの春頃。


まさか自分の中での樹の存在がここまで大きくなるなんて思わなかったなぁ。


するとある考えが頭の中に浮かぶ訳で。



「…樹はあたしのチョコ、……貰ってくれるの、かなぁ…?」

きっと寝てしまってるだろうと、用心もせずに口から零れた本音の声と気持ち。


あれだけ嫌がってた樹を何年も見てる訳だし…それに、今でもこんなに嫌がってて、それも単なる“嫌だ”って気持ちじゃなくって。


あの樹に“怖い”とまで思わせるぐらいなんだから。