「…ねぇ、何?」

ズイッと近付いて顔を接近させる。


あ…あぁ!!

混乱状態になってあたしがあたふたすると、軽く樹は目を閉じて顔を傾けるとあたしの唇に唇を掠める様な口付けをした。


…っ!!


「樹…っ」

何だかこんな甘い時間を過ごすだけでどんどん頭の中がいっぱいいっぱいになって来る。



「ん?」

下から優しい笑みを浮かべてあたしを見てくれる。

樹のこんな顔…あたししか知らない、のかな?


「樹も…樹もずっと、あたしだけのものでいてね……?」

眠りにつく前の甘い時間。


不意に樹が口にした言葉の数々を思い出して、小さく自信無さ気な声。

それでもやっぱり…樹は格好良いし、樹のことを好きだって子はたくさんいると思うから、いつだって“不安”はあるの。



「愛梨のもの?」

けど返ってきたその言葉にあたしの表情はみるみる哀しさを帯びてゆく。


…え、どうして?


「無理…なの?」

震える声でそう言うあたしを見て、樹は可笑しそうにケラケラ笑う。


「別に?…けど、まぁ……
愛梨が俺のモノってことには変わりないからね」

クスッと悪戯に笑って言う。


何か…すっごい余裕な感じ!


「樹っていっつも余裕だよね」

ムッとした感じで言うと、樹はあたしを見上げて『余裕?』と聞いてくる。



「うん、余裕。
何か…あたしが樹から絶対離れないって分かってるみたい」