「…ん……」
瞑ったままの目を薄く開いて、小さな欠伸が口から零れる。
隣ではスースーッと、規則正しい寝息を聴かせてくれる樹の姿。
起こさないよう少し身体を動かして樹の寝顔をジーッと見つめると…自然に顔がニヤけて堪らない。
女の人より綺麗な顔……
樹ってコンプレックスとか持ってるのかな?
ないだろうな。
そんなことを考えながら樹の寝顔を盗み見ているあたしは、きっと相当の変態。なんじゃないかって…少しだけ心配になる。
綺麗なその唇が妙に色っぽくて、思わず手を伸ばして指で触れてしまう。
「柔らかい…」
無抵抗なことをいい事にジッとひたすらいつもあんまり直視できない樹を見つめる。
長い自分の髪を方耳に掛けて。
そっと唇を近付けると……
「変態」
パチッとあたしの目の前には大きな猫見たいな目が。
「お…お、……起きてたの!?」
ボッと顔が急に熱くなってきて勢い良く身体を樹から離す。
欠伸をして全く動じない樹に対してあたしは焦ってテンパってとにかく今にも沸騰寸前。
そんな…起きてたなんて!!
しかもしかも、しかも!!……変態、って。
真っ赤にそまる頬と、同じようにサーッと血の気が引くような感じ。
「『柔らかい…』って何が?」
ニヤッと笑った樹が咄嗟にあたしの腕を掴んで、寝たまま下から見上げるように上目遣いでそう聞く。
「……それはっ?!」
耳まで真っ赤になってるんじゃないかな…
それくらい今のあたしは身体の体感温度が熱くて溶けそうなくらい。