…愛梨Side




上から降ってきた樹の言葉に無意識にも目が軽く見開かれるのが分かった。


「…え?」

冷静さも無くしていたこの雰囲気に呑まれてて、ハッとしたようにあたしは目の前にある樹の端正で綺麗な顔を見つめた。


「お前は俺だけを見てればいい…」

そう呟いてから首筋に触れる樹の綺麗な指先。


そのまま片方の手で徐々に纏う服を脱がされていく、けど…不思議と抵抗心も無くて。


「ん…っ……」

「誰にもやらない」


チュッと音を立てて胸元にキスを降らす。


「この目も、耳も、……胸も唇も指も…全部」

そう言って順番にいくつもいくつもたくさんの甘い甘いキスを軽く音を鳴らして降らす。


いつになく感情表現が豊かな樹に。

いつもより大人っぽく色っぽい、そんな樹にあたしの心臓は持ちそうにも無い。


…今すぐにでも壊れて破裂してしまいそう。



「愛してる…」

不意に聞こえたその言葉と優しさを含んだ声色。


「……っ…いつ…」

こんな言葉を滅多に言わない樹だからこそ、あたしは思わず彼の名前を呼んでしまう。



けどそれを遮る様に樹の唇があたしの唇を強引に塞ぐ。


“愛してる”


きっと恋人同士ならお互いの気持ちを確かめ合う為に言葉や身体を重ねるのかもしれないけど……



樹は言葉なんて、そんな甘い言葉なんて滅多にくれたりなんてしない。


“好き”だって“大好き”だって…

なのに『愛してる』って、それだけで今のあたしはもう幸せな気持ちでいっぱいになっちゃって、あぁ…やっぱり単純。



そう思うの。