行き場の無い視線をゆらゆらとさせてあらゆる方向に向かわせると、自然と逃げた先には彼の目があった。


「…で?何で破局したわけー?」

完全に不真面目な態度であたしに言う。


それに破局だなんてそんなこと、一言だって言ってなんてないのに。

本当に、
この人って……


と若干少し落胆した気持ちになってから、その合わさった視線の先の彼に苦笑いを浮かべる。


「してないよ…」

ムッとしつつも強気な態度で言い返す。


「でも昨日、泣いてたっしょ?」

とあたしの目を指差して、不思議そうな雰囲気を漂わせながらも首を傾げてみせた。


その言葉に一瞬だけ胸が高鳴る。


「……それは、その…」

「じゃぁ喧嘩?だっりぃのなぁーそういうのって」

ケラケラと笑いながら椅子に深く腰掛けて、白井くんは小さく欠伸をした。


「白井くん…は、」

無意識に口が開いていて、


「ん?」

と、これも短く返事をしてするこの表情も、凄く樹によく似てる。


「白井くんは、…白井くんは……その、…彼女っていうか、好きな人…とかいないの?」



瞬間。


彼の表情が少し曇る。


「んなのいないけど?めんどくせーだけじゃん、女って…」

「今までは…?今までは彼女とか、いなかったの?」

そうすれば白井くんの表情はみるみる険しいもになる、だけどすぐにいつもの感情の読み取れない。


そんな表情に変わる。