「何で今日は一緒にいないわけ?」

あたしの隣で授業なんてやる気無さそうに、器用な手付きでペンをクルクルと回しながら白井くんが言った。


朝も待っててくれなくて。

あたしが言った時にはもう樹は学校に居て何の変化も無いって感じで。


逆にあたしを無い物として見てるような気がして、そのせいか余計に話し掛けることも出来ないままでいる。


「…別に、何もないよ…?」

作った笑顔を浮かべてそう言えば、不審そうに彼はあたしの顔を覗き込んだ。


「俺、まだ『何かあった?』とは聞いてねぇけど?」

ニヤリと笑って見えた八重歯。

これはもう見慣れちゃったけど…彼の特徴的な部分かもしれない。


それよりも、…痛い所を突かれた気がして押し黙ったままそれ以上の言葉が出てこなくてあらゆる所に視線を送って誤魔化してみる。



意外に…鋭い、かも。


「んー?別れたんだったら俺が今すぐにでも貰ってやろっか?」

ふざけた様に、茶化すようにそう言ってから、組んでる足を反対に組み返してみせた。


この足を組む癖…樹と一緒だ。

やっぱりどんなことを考えても樹に繋げてしまうのは。


きっとあたしの中での樹が中心で、あたしを形成するものの軸になっちゃってるから。


ふと視線をずらして樹の方に向ける…

けど樹は無機質な表情でボーっと何処かを眺めていた。


言うならそれはいつも通りの樹。
少しぐらい、気にして欲しかったなとか、少しくらいあたしを気に止めて欲しかったなとか。

そんなのただの我が儘で勝手なことなのに。



なんて言い出せばいいかも、謝ればいいかも分かんなくてどんどん泣きそうになって…それは大きく、不安とかになって。


結果的に罪悪感とかになってくる。