…愛梨Side




瞼が重いまま目を覚まして、でも考え過ぎたせいか寝不足な感じで頭も重い。


あたし…
ただ二人の気持ちばっか考えてたのかな。



自分に似てる彼女のことをきっとまだ何処かで忘れられない。…思い出に出来ないまま過ぎる時間を過ごしてる白井くん。

確かに彼は強引で、性格も悪いと…思う。


けどこの指輪もちゃんと返してくれた、それに本当にそんなことをあたしにしたいんじゃないって。


悲しそうにどこか見つめてたり。

無機質な視線の先にはきっと彼女、梓紗さんがいるんじゃないか…って。



けどそれは正しいのかもしれないけど間違いだった。

ただ顔が似てるってせいで、悲しげな白井くんを見たせいで、先輩に色んな話を聞いたせいで見えなくなってた。


「嫌だった…よね……」


本当は誰よりも考えなきゃいけない、樹の気持ち。


大体あの時だって、樹が来てくれなかったら本当にどうなってたかも分んない。

きっとあんな言い方とか、冷たい事を言ってたけど…知ってる。本当は誰よりもあたしのこを心配して気に掛けてくれてるのも。


なのにあたしは…

樹のことを無神経に傷付けちゃった……


簡単に見せはしないけど樹は凄く凄く優しい人だよ。


なのに。
なのにあたし。



再び零れて落ちる涙に目を少し細めて。


舌唇をギュッと強く詰むんだ。