「戻った方がいいんじゃない?」
担任も入ってきてそう愛梨に言う、すると少し名残惜しそうにも笑顔を俺に向けた。
「うん!…一緒に、なれたらいいねっ」
照れくさそうにもクシャッとした笑顔を浮かべると、そのまま翔太の後ろの自分の席に戻っていく。
ふと背中を見て、…細い。と意味深にも思ったりする。
それから教室での話が少し進んだ頃。
─ガラガラ…っ
遅れる様にして教室の中に入って来た男。
「おーい、転校初日に遅刻か~?」
とそれだけ言ってから再び“席替え”についての説明を始めた。
「え、席替えすんの?」
そう隣の女子に聞けば、その女子も満更でも無いって感じの顔してて…単純だなぁ、って思う。
でもそう考えると…愛梨もそれに近いタイプかもしれない。
「へぇー…」
その声で少しチラリと視線を送れば、やっぱり視線はぶつかって気色の悪い笑みを向けられる。
男同士で笑い合う趣味は無いよ。
そして…その時。
あることが頭の奥底に浮かんで消えた。
けどそれはもう一度、浮かびあがって消えて…俺の眉を顰めさせる。
もしかしたらこの席替えはしない方が…
そしてその予感は、俺の頭を悩ませる。