結局はあの後、今度は担任にも怒られて。

でもボーっとしてたからいまいち何を言われたのか、あまり覚えていないってのが現実。


「でも本当…悪い事にならなくて良かったぁ……」

それから何度も良かった良かったと愛梨は嬉しそうに繰り返した。


俺にとっては、愛梨がアイツの毒牙にやられなかったことが良かったんだけど…それはかなり本当に。


「俺そんなミスはしないし」

とは言ってみたものの、もし弁償になったらどうしようとか。

考え無かったと言ったら嘘になる、…だって実際問題に俺は金無いし、誰かさんのせいで。


ってこれは言うべきじゃない、な。


「確かに…樹っていつでも完璧かも」

良かったの次は『うん』と、何度も何度も自問自答のように繰り返すから。


「いつでも完璧…ね」

思わずクスッと笑ってしまう。

別にいつも完璧なわけじゃないのにって、


「え?違うの??」

「別に」

チラッと少しだけ愛梨に笑いかけて言う。


別にいつも完璧なわけじゃないし、むしろいつでも何もかもを完璧にやる奴は人間なんかじゃない。

そしたら俺だって人間じゃ無いし……



生きてるから感情だってある。

怒ったり、嬉しかったり、悲しいことって…あんまりないけど。


嫉妬、劣等感、安心感、愛情。


色んなものがあるから…俺は俺でいられるし、愛梨は愛梨でいられるんだから。