…愛梨side




「そ…そんなの、知らないし、関係なんてないよっ!」


怖い。怖いけど言い返す。


だって…

このままじゃ指輪、返してもらえない。



それに泣いていつもみたいに弱気でめそめそしてたら、良いようにされておしまいだよ…


嫌だ、絶対そんなの嫌だ!



「本当はビビってるくせして強がってる…マジ、そそる」


そう言って手首を掴まれると、グイッと急に引き寄せられた。


っ!!


どんなに逃げようと動いても、こんな力。

男の子を前に叶う筈がない。



「食べていい?…って嫌って言っても食うけど」

鼻で笑い、あたしの足の太股を撫でて言った。



瞬間。


ゾクゾクっと身体が恐怖で震える…



やっぱりあたしは馬鹿だ。

思いつきの行動ばっかで、頭も悪くて…どうしてこうなること分からなかったのかな。



樹が言う通りに…

指輪、…また、買ってもらえば良かったのかもしれない。


どんどん恐怖とか後悔とか色んな気持ちがぐちゃぐちゃになって、ポロリ。涙が零れた。



馬鹿だ…



「あたし…馬鹿だ……」

下を向いて、そう呟いた。




─その時だった…



ドンッ!バンッ!


「…っ!!」

物が何かに叩かれたような…ぶつかったような音。


そしてあたしが見た時には、教室のドアは倒れるようにして床に横たわっていた。



「確かに…馬鹿かもね」

横たわるドアの上を平然と歩く、その人はそう言った。