「何か見ない間に愛ちゃんまた可愛くなったねっ」

ニッコリと微笑んで、あたしの髪の先を指に絡めて翔太くんがそう言う。

そんな翔太くんの些細な仕草にドキッとして、顔を少しばかり赤らめて俯いてしまう自分は…どうなんだろう?


「そ…そんなこと、ないよ…?」

そう言って見上げる翔太くんは、たった数週間会ってない間に、ちょっと大人っぽくなった気もした。


するとその翔太くんの腕を誰かが掴む。


─っ?

そう思って更に上を見上げると……


「新学期早々、さっそく浮気?」

不貞腐れた表情に、少しの笑みを浮かべてあたしを見るのは…


「いっちゃーん!なによ、浮気って!!」

ふざけた様に翔太くんが言うと、その頭を誰かがバコッと叩いた。というか殴った。


あ…あーあ。

とか思ってると、今度そのあたしの顎を引かれて上を向かされる。


「……触らせたらダメ」

甘く囁くように樹が言う。


それだけであたしの体内温度はMAXまで上がる。


「一発KOじゃんか!」

「…当たり前じゃない、相手は“氷の王子”だもーん」


冷やかすような二人の声にハッとして、少し樹と距離を取る。



あー…、危ない危ないっ!

汗を掻いてるわけじゃないのに、額に手を当てて平常心を保とうと努力してみる。



すると今度は樹が顔を近付けて…

「その鈍感さが危ないんだよ」

と、美菜に続き意味深な言葉を残して歩いて行ってしまった。