何度も何度も口付けをして、けどそれ以上…?
には、ならなかったのが幸い。
こんな時に、その…ね?そんなことしちゃったら、あたしは本当に大変なことになってしまうわけで……、うん。
その時ふと樹の視線があたしから違う場所に移った。
「あれ、…指輪は?」
その瞬間あたしは『しまった!』と心の中で絶叫した。
「あ……あぁっ…!」
手の平をバタバタ、口をパクパク。
「どうしたわけ?」
あたしを自分の足の間に納めたまま不思議そうな顔をしてあたしの顔を覗きこむ樹。
言いだしたくても…
なかなか言えない、その理由。
するとあたしを見る樹の目が、何だかほんの少しばかり鋭いモノになったような感じがした。
う゛ぅっ…。
「…アイツ?」
やっぱりこんな時の樹はいつもの数倍に増して鋭い。
「な、…なんか、……取られちゃって、それで…なんか……」
「なんかじゃないでしょ」
冷たくそう言いきると、ハァッと面倒そうに溜め息を一つ吐いた。
「…ご、ごめん……」
とにかく申し訳無くて、だけどやっぱりそれよりも……
大事にいつも肌身離さず持っていた樹からのプレゼントで、あたしが胸を張って樹の彼女だって、そう言える自信をくれたリング。
だからこそ、泣きたくて仕方が無い気持ちになる。