スンッと鼻を鳴らして、時折こっちをチラリと見て悲しそうな目をする。
「愛梨の部屋、行くよ」
そんな愛梨の腕を掴んで無理矢理立たせ、そのまま階段を上って一番奥にある愛梨の部屋のドアの持ち手に手を掛ける。
バタン……。
ドアを閉めてその掴んでいた手をパッと離して、
ゆっくりと小さな息を漏らしながらやけにピンクの多いベッドに腰を下ろした。
「……なに立ってんの?」
まだドアの側で立ったまま、じっと自分の足を見てるんだか…それとも床を見てるんだか。
分かんないけど。
「だって…」
「ん?」
聞き返せば黙る。
だからこうなった時の愛梨は性質が悪い。
というか、…精神年齢がほとんど半減するからね。
「ん」
そんな愛梨をチラッと見上げるようして見てから、ポンポンと自分の隣を叩けば少し愛梨の固い表情は和らいで…
目が軽く見開かれるのがよく分かる。
だから『おいで』
と、一言だけそう小さく囁けばすぐに愛梨は傍に来て、ちょこんと隣に座る。
「……ねぇ、樹…?」
俺はボーっと何を見るでもなく、ただ愛梨の部屋を改めて眺めてたりする。
顔を見なくても分かる。愛梨の今の表情くらい、
「ん?」
と短く返せばすぐに次のお決まりの台詞が飛んでくる。
「…怒ってる……?」