だけど愛梨はそのギュッと抱きしめてる袋を離そうとしない。
…ん?
さっき頷いてた、よね?
「愛梨…?」
まだ俯いたままの愛梨は顔を少し赤くしながらも、未だに瞳を揺らせていた。
それでもって、再びさっきよりもギュゥ…っと強く握りしめて。
「…あの、ね…」
あ、泣いてる。
俺…今回は泣かせる様なことしてない気がしたんだけど、うん。
けどその震える愛梨の声と鼻をすするその音と仕草は、やっぱり誰が見ても泣いてるし…でも、俺は何もしてないし。
「ん?」
ここで俺が冷たい態度を取れば、きっと今よりも泣く。
それで最終的に俺が悪者になって『もういい』か『何でそんなこと言うの?』の、どちらかを言われる。確実に。
だからこそ優しく。
…って言っても、
意識しなくても自分の口から出た声色は優しさを含んでいた。
「…あのね…っ…もしかしたら、樹…嫌かも…」
「嫌…?」
さっきよりも下を俯いて。
だからこそ、そんな愛梨の顔を覗きこんで自信を無くしたその表情を変えようと、
無意識にも頬に自分の手を添えていた。
指で涙を拭って、
「子供みたいだよ、…愛梨」
クスッと小さく笑って、その愛梨が持つ袋に手を伸ばした。