「嘘嘘」
ちょっとだけ笑って言う。
それでも何か不機嫌っぽい愛梨の表情。
「…可愛いよ」
だから少し窮屈な車内の中で愛梨は引き寄せて、耳元にそっとそんな言葉を。
こういうの。苦手。
けどすぐに愛梨の顔は真っ赤になって…行き場を無くしたんだろうか、心成しか視線はただ宙を泳ぐようにユラユラ。
だけどそんな愛梨を見るのが楽しいから。
もっとさっきよりも密着してみる。
「…─ちょっ?!……ダ、ダメだよ!!」
周りに聞こえないようにか、小さくワザとらいいような声で言うと俺の胸をとんとんと叩く。
けどそんな照れる愛梨が可愛くて…
「何がダメなの?」
もっともっと近くで囁く。
そうすればもっともっと愛梨の頬は赤く、桃色に染まっていく。
腰に回した腕に力を込める。
そのままゆっくりと手を服の中に忍ばせて…
「いっ!!…樹っ」
そんな焦る愛梨すらも今の俺にとっては面白くて仕方が無い。
「…人が……いるんだから…っ?!」
ちょっとうるさい愛梨の口を俺の唇で塞ぐ。
都合がいい事にこの満員の中で俺の腕の中にいる愛梨は誰にも見られないし…
まぁ、その方が都合がいいんだけど。