まだ少し冷たい樹の手があたしの頬に触れて、
なのにその冷たさは幸せなくらいに温かく熱くあたしを火照らせるもので。
「ずっと…ずっと傍に居てね…?」
ジッと逸らさずに樹の目を見つめながらあたしは言う。もっと他にも気の利いた言葉を言えたらいいのに、
今あたしに言える精一杯の言葉はこんな言葉しか無くて。
だけどそれは何よりの素直な気持ちだった。
「居るよ」
「離れないでね…、ずっと好きでいてね…?」
「離れないし、ずっと好きだよ」
「…本当に本当に──…っ?!」
瞬間、勢い良く引き寄せられる。
「愛梨はくどい。…指輪、何の為にあげたと思ってるの?」
グイッと上を向かせるように顎に添えられた樹の手。
「分からないよね、馬鹿な愛梨には…
ただのプレゼントだと思ったら大間違い、だからね」
「…え、じゃ、じゃぁ……?」
すると重なるあたしと樹の唇。
いつもの強引で長いものじゃなくってすぐに触れあった唇達は少しの離れ難い気持ちを隠して離れていく。
「お前が俺のものっていう印、…ずっと傍に居てあげるって誓ったんだよ」
「……、」
やっぱり今日の樹は変だ、おかしい。ズルイ。
「何、嫌とか言わせないけど」
嫌なわけ…ないじゃんか、こんなにこんなに死んじゃいそうなくらい大好きなんだから。
「樹」
「ん…っ」
名前を呼ばれて下を向いた樹の唇を、あたしはいつも樹がするのと同じように強引に奪い去った。
少し赤らめた樹の顔と、今日の出来事はきっときっと忘れられなくなりそう。