「傷付けるって分かってても…泣かせるって分かってても、お前を離せないから…手放せないから」
「……え、」
こんなの、ズルイ。
絶対こんなこと言わないもん…樹は言わない。
おかしいよ。何かの間違いだよ。
指輪まで貰って、こんな…こんな嬉しくて死んじゃいそうになるくらいの言葉まで貰ってもう胸がいっぱいになって、
…本当に死んじゃいそうだよ?あたし。
「ごめんね…愛梨」
そのままあたしの手の甲に…チュッと口付けると、
「来年も、その次の年もこれからずっとお前の誕生日に傍にいるのは俺だけ」
「うん…、うん…っ…!」
考えられないくらいの甘い言葉をくれた。
他の男の子ならこんな台詞簡単に言えちゃうのかもしれないけど、…やっぱり樹が言って事が何よりも嬉しいの。
「…それと、それ左手にしたらダメだからね」
「どうして…?」
「左の薬指はもう少し経ってから…ね?」
今度は左の薬指に掠めるようなキスを一つだけくれて…瞬間的にその場所だけが熱く熱く感じられる。
「…あり…がと…っ…」
「また泣いた。」
再び樹はクスクス笑いだしてそんなあたしをどこか愛おしそうな目で見守ってくれている。