「チェック…済み……?」


「うん、まぁそんな事はどうでもいいよ」

そう言ってからもう一度あたしの手を取って、絡まる視線同士が息苦しくもあり愛しい程の息苦しさでもあった。


整った樹の顔立ちに胸が焦がれて、

何年も一緒に居るのに未だにこういう樹の表情には慣れそうも無い。


そのままギュッともう一度抱きしめられたかと思えば微かに首元に温かい吐息が掠まり、


「これからも…何度も愛梨を泣かせて傷付けるかもしれない」

突然何を言い出すのかと思えばそんなことを言うから、…正直かなり驚きが隠せない。

だけどこの樹の声を聞く限りそれは真剣そのもので…
だからこそ何も言いだせなくてただ『…うん』とそう一言しか言えなかったの、


「優しい性格じゃないし気も長いほうじゃない、周りが言う通りに冷たい男だし」

更に更に樹のあたしを包み込む強さと温かさは強まる。

あたしの心臓の音が聞こえちゃんじゃないか…そんな心配をしていれば。聴こえる、樹の心臓の音、


…凄く、速い。

もしかしてあたしと同じように、樹もドキドキしてるのかな?


何だかそう思うと嬉しくてたまらない。


「それでも…駄目なんだよね、俺」

駄目…って?


少し身体をずらして顔を樹の方に向けると、何だか見たことも無いようなそんな表情を樹はしていた。


「……だ、め?」

「うん。」

するとゆっくりとあたしから離れて手を取った。