「とんと見かけないから、どうしたのか気になってはいたんだよ。また長期出張かい?」



リズの仕事は誰であろうと秘密。

無論、この夫人も知らない。


「そんなところです」



苦笑交じりにごまかす。


キルシュはそれ以上詮索はせず、店番に戻る。






「今日のお勧めは、たっぷりイチゴジャムのフレンチトーストと新鮮卵のベリーシフォンケーキだよ。何にする?」



「では、その二つを」


簡単に決めてしまったが、店主もそんなリズの性格を知ってか、手際よくその二つを皿にのせる。



香り高いダージリンティーとともに、トレイにのせてリズに渡す。


それにあわせて、リズも代金を渡す。






チップを少しだけ上乗せするのはいつものこと。リズ自身はあまり買い物などに行かないため、チップを払うのもここくらいのものだ。