「お待たせいたしました」 馬車の揺れがおさまり、御者から声がかかる。 「わかった。今降りる」 ギッと踏み台が短い悲鳴をあげて主人の重みに耐える。 「今日は城には戻らない。ロークにもそう伝えておいてくれ」 「かしこまりました」 そう言うと、御者は再び馬車を操り雑踏の中へ消えていった。 先程の城の中の雑音とは違い、騒雑しくしかし、活気のある雑踏の中。 キルシュと言うケーキ屋はあった。